『TRA次郎』は,変圧器を充電したときに流れる励磁突入電流と,励磁突入電流に伴って生じる電圧低下を計算することが可能な,ウェブ上で動作するプログラム(ウェブアプリ)です。どなたでも無償でご利用いただけます(ただしご利用には電力中央研究所との使用許諾契約の締結が必要です)。
TRA次郎の試験運用を実施しています。試験運用中ですがご利用は可能です。利用を希望される方はページ右上の「利用申込」ボタンからお申し込みください。なお正式運用は2025年4月からを予定しております。
励磁突入電流とは
変圧器を充電(電力系統に接続)すると,変圧器の定格電流の数倍から十数倍もの大きさの電流が流れることがあります。この現象は古くから知られており,そのときに流れる電流は励磁突入電流と呼ばれています。
励磁突入電流は充電前の変圧器の状態や,充電の瞬間の系統電圧の大きさや位相などに影響を受け,大きな電流が流れる場合もあれば,そうでない場合もあります。大きな電流が流れた場合には,これに伴って変圧器周辺の電力系統の電圧が瞬間的に低下(瞬時電圧低下)することがあります。
励磁突入電流や瞬時電圧低下の大きさは,前述の要素のほかにもさまざまな要因に影響を受けるため,これを精度よく計算するためには電力系統の電圧や電流を解析する電力系統シミュレータ(特徴の異なるさまざまな種類のシミュレータがあります。国内では電力中央研究所が開発したオフラインベースのソフトウェア『電力系統瞬時値解析プログラムXTAP』がよく利用されています)が用いられますが,本ウェブアプリでは一定の仮定のもと,これらシミュレータと同等の精度で変圧器を充電したときの励磁突入電流および瞬時電圧低下の大きさ(電圧低下率)を計算することができます。
計算原理概要
本ウェブアプリでは変圧器と電力系統を電気回路として表現し,その回路から得られる微分方程式(電圧と電流の関係式)を解いて電流,電圧を与える式を導出することで,高精度かつ高速に励磁突入電流と電圧低下率を計算します。回路の導出においては次に示すいくつかの現実的な仮定をしています。これらの仮定を満足できない計算条件の場合には,正しく計算されない場合があります。
変圧器にはさまざまな結線,巻線数のものが存在しますが,本ウェブアプリでは電力系統で比較的頻繁に利用されている変圧器にのみ対応しております。なお,今後対応可能な変圧器の種類を増やしていく予定です。
より詳しい計算原理につきましては,次に示す文献をご参照ください。
参考文献